第158話

(百合side)



すごくつらい顔をした颯がいた。それは私が妊娠してなかったからか…それとも妊娠できない体だからか。



いや、両方か…。



自分の“女”という性までも奪われた気がした。



「はや、て…」



どんどん私から離れていく颯。離れていくたび周りはどんどん真っ暗になる。



はやてっ…はやてっ!!!



姿が見えなくなると遂に真っ暗になった。それは颯と出会う前。いつも私がいた夢の中の部屋。



颯がいないという事実に込み上げてきたのは吐き気。それによって一気に意識が覚醒した。



「おいっ!お前…顔真っ青だぞ」



「あ、えっ?あぁ…」




はぁ、はぁ…



呼吸がなかなか整わず、額には汗で前髪が張り付いていた。どうやらこのソファーの上でずっと眠っていたみたいだった。

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