第154話

そう言えば顎に掛けられた手は外れ、降参とでも言うような顔をすると私から離れた。



「フッ、でも最初は本当に抱くつもりだったこと忘れんなよ」



そう言うとテーブルに置いてあった携帯をポケットにしまえば、どうやら出掛ける準備をしているようだった。



「どこか行くの?」



「まあな。ここには俺と護衛二人しか出入りしねぇから安心しろ。自由に使ってて構わねぇ」



頭をクシャッと撫でられると急に霞みはじめた景色。



今頃みんな、私のこと探してくれてるんだろうな…。それなのに帰れないという私をますます真っ黒に感じた。



もうここから抜けられない、底なし沼にハマるように一瞬で私は意識を手放した。

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