第144話

先生の説明は淡々と続いた。どうやら不妊にもレベルがあり、私は一番上。治療をしてもできない可能性が高い。出来る方がまれだということを。




ガラガラと音を立てて何かが崩れていくような感覚だった。透さんも秋さんも、直樹君も喜んでた。




何より、私をただただ抱きしめて眠りについた颯のあのあったかい顔も…




私が崩してしまうことが怖かった。




気付けば産婦人科の外。



「あっ…おわっ、たんだ…」



長い廊下。帰りの道順も分からなかった。クーラーの効いていないところではすぐに汗ばむ季節。なのに私の体はとても冷え切っていた。

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