第107話

「百合」



プライベートルームへと着くと、一直線に向かった寝室。優しく、綿のようにベットへ寝かせてくれればすぐに私の隣へと横になって抱きしめてくれる颯。



「信じらんねぇな」


「ふふっ…まだ分かんないよ?」


「百合が一番分かってるんじゃないのか?」



カーテンが閉まる薄暗い部屋の中、颯の瞳に射貫かれ、そう聞かれただけで心臓がトクンと高鳴った。


颯自身と繋がるようになってから、生理が来ていなかった。少し遅れているだけ、そう思っていたけど、目眩や気持ち悪さ、そして徐々に込み上げてきた吐き気に確信めいたものがあった。



静かに頷けば



「あぁ、抱きてぇな」



静かに呟く颯。



「ふふっ、きっとしばらくはダメだね」



「チッ…しょうがねぇ。百合は少しチビに貸してやる」



そんなこと言ってる颯の顔は分かりやすいほど綻んでいた。



「楽しみだな」



「うん」



私のお腹の上に置かれた大きくて暖かい手。上から包めば、それは感じたことのないほどの、これ以上ない幸せだった。

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