第88話

次の日、たっぷり眠っていたせいか早く目覚めた朝。隣では颯が気持ちよさそうに眠ってる。


まだ痛々しいその手にキスをすれば、先にリビング階へと足を運んだ。まだ5時前…。いないと思ったのにそこにはやっぱりいつもの男の子がいた。



「なおきくん」


「っ!!百合さん!!」


声をかければ跳び上がるように鍋から顔を上げた直樹君。私に気付けばとても驚いたような顔をしたけど


「っ!大丈夫!?」



私の方が驚いた。



だって手には松葉杖、いつものエプロンは着けてるのが意味も無いほど着崩れていて、システムキッチンにもたれながら料理する姿はいつもの直樹くんじゃなかった。

急いで近よれば、



「百合さん!本当に申し訳ございませんでした…。っ!ってぇ…」



少し大きな声、そして謝ろうと頭を下げようとしたのか。少し俯いただけでとても痛そうな声を上げていた。

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