第87話

何かを確認すれば安心したように笑みを浮かべた颯。



「三日寝てた。まだ夜中だ。もう一回寝れるか?休め」



起き上がる私にそう呟けば、優しく寝かせてくれようとしたけど頭に感じた違和感。


「これ…」



颯の右手。


グルグルと巻かれた包帯はさっき私の見た夢のもの。颯に…私が…



「あいつ大げさに巻きすぎだ。何にも心配いらねぇ。三日経って痛みも気にならない」



きっと秋さんが一生懸命手当てしてくれたんだろう。それでも、


「ごめんなさい、はや、て、ごめんなさい…」



「っ、いいから、気にするな。お前が無事だった。それだけでいい。それ以上何もない」



ここで泣くのはずるい。



必死で堪え謝れば、颯の大きな胸と優しくてずるい言葉に包まれた。そんなこと言われたらあっという間に涙はこぼれてしまう。



何度も何度も頭を撫でてくれるその手に眠りの世界へ誘われるのは簡単で。それでも意識を失う少し前、私は颯のことを守りたい。二度と傷つけないと誓ったんだ。

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