第85話

自分に刺そうと思った時、騒がしい音がすれば何か聞こえた。聞こえた方に顔を向けるも、もう私は何も見えなかった。



真っ暗な世界、背後からは気持ちいい風を感じる。早くそっちに行きたいのに、とても優しい声が私を引き留めた。



一人でいたいのに、

それを絶対に許してくれない。



許してくれないなら



殺してしまう?



そんな心の声が聞こえた。殺して、私もその後気持ちのいいところへ行こう。そう思うのに私の体はそれを拒否するようだった。



やっと出た震える声は、まるで殺したくないかのよう。それなのに返ってきた声は、殺されたいかのような喜びを感じる声だった。



どうして…?



そう思えば突然感じた押さえつけられるような力。さらに私の手に生暖かいものを感じれば、目の前には颯がいた。



大好きで、大切な颯がいた。



私、何して…る、の?…何を、したの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る