第79話

「ごめ、ごめん、なさい…ごめんなさい」


謝る百合ちゃんの手からは力が抜け、刃物から手が離れれば百合ちゃんの瞳には色が戻っていた。



「何を謝る?」



颯がそう言えばますます溢れる涙。それを全て受け止めるかのように窓枠に腰かける百合ちゃん強く抱きしめている颯。



まるで一枚の絵画のように美しかった。目が離せなかった。ゆっくり抱き上げ部屋の中へ百合ちゃんを降ろせば



「あぶねぇ…」



本気で間に合わないと思ったが…。助かった。一人ため息と共にはき出せば



「透さん!若!」



その声に振り向けば、秋が救急箱を持って走ってきていた。


「みなさん怪我などは…若っ!!」



怪我人がいないか確認しようとすればすぐさま気付いた颯の怪我。それもそのはず、颯の右手は血がぽたぽたと下に流れ落ちるほど。


それでも…

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