第78話

一歩近づけば百合ちゃんの向けるナイフ、その刃の部分を何の躊躇もなくグッと掴んだ。


っ!!颯…


みるみるうちに颯の握った手からは真っ赤な血が溢れだしていた。



「は、はや、て…?」



気が戻ってきたのかようやく颯の名前を呼んだ百合ちゃん。それでもまだ体は半分が窓の外。でも、颯はまるでそんなこと気にしてなかった。




「百合、百合の仇、一緒に取ろう。

一緒に…殺そうか」




すごく異常なことを言ってるはずなのに颯の声はまるで愛を呟いているかのようにとても柔らかい。



「それとも、先に俺を殺すか?」 



優しい瞳で見つめれば、百合ちゃんの瞳に涙がたまり、それは一瞬でぽろぽろとこぼれだした。



そう、今百合ちゃんに必要なのは綺麗事じゃない。狂気ともとれる颯の本気の言葉と愛だった。

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