第75話
(透side)
とても優しい声だった。百合ちゃんの瞳に金縛りに遭ったかのように動けない俺を緩ませたのは颯のそんな声。
「クッ…!フゥー…」
動く体で必死に息を吸った。その中でもゆっくりゆっくり、一歩づつ百合ちゃんに近づいていく颯。すると、
「もう、…いや…、みんな…いやっ!!!」
震える声、それでも大きな声で頭を抱え、自分のテリトリーに入られること自体拒否する百合ちゃん。それは間違いなく昔の百合ちゃんだった。
「私は、私は綺麗じゃない!綺麗な人間じゃない!真っ黒で…白じゃない!!復讐だって構わない!!」
金切り声、抱える頭を掻きむしりそう叫ぶ姿。それはもう一人のいつもの百合ちゃんに言い聞かせるかのように戦っていた。
周りから綺麗だと言われ、優しい、寛大とどんどん広がっていった姿。それでも百合ちゃんは人に言えない仕事をしていた。そんな自分を綺麗だと、流石と言わないでほしい。そんな心の叫び。
周りが作り上げた百合ちゃんのイメージ。それが百合ちゃんを追い詰めたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます