第73話

「チッ…」


「急ごう」



直樹を置き、止まったままのエレベーターで向かうはプライベートルーム。百合の心、直樹の言葉で完全に壊れた。


何より、事故死だと思っていた親が殺されたということを知り、その犯人の顔写真まで見たら平常心でいられるわけがなかった。



藤堂の女の弱みにつけ込み、百合を壊すことを敵は狙ってやがったな。そんな百合が間違いなく居るのは、そしてやろうとしていることは…



「百合っ!!」


「百合ちゃん!!」



プライベートルームを駆け抜け、着いたのはこのフロアの一番奥。風に当たるのが好きな百合の格好の場所だった。それは百合の腰から上の高さにある窓。いつもそれを開けて景色を見ながら風に当たっているが…



やっぱり今日はそうじゃない。

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