第72話

(颯side)



「お前…何か言ったな?」



未だ立ち上がれない直樹を見下ろした。



「言えっ!!!」



焦る気持ちからフロア全体に響く程のでかい声が出た。



「殺したい…と百合さんが、親の仇だと、思ったんです…。でもそんなの百合さんらしくない!だから…百合さんのご両親はそんなの望んでいないとっーーグハッ!!」



途切れ途切れ、苦しげにそう話す直樹はチリのように吹っ飛んだ。座り込む直樹の胸ぐらを掴み上げ、俺が本気で腹に一発いれたのが原因だった。



「直樹、それで済んだことに感謝しろ」



いつも直樹を弟として可愛がってる透も頭にきたようだ。確実に折れてるであろう肋骨にもそれで済んだと言う透は充分に気付いていた。

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