第65話

「百合さん追いかけます!」



未だ叫び、バタバタとする女を押さえつける見張りに声をかけ、俺は百合さんの後を追った。



エレベーターに乗り込む前になんとか追いつき、着いたのはリビング階だった。ここら辺の景色が一望できる窓までゆっくり歩いて行くと、窓に手を触れ、百合さんは町並みを見下ろしていた。



「百合…さん?」



もう何も言わず振り返った百合さん。相変わらずその瞳は真っ暗で、初めて百合さんを怖いと思った。そして、



「…し…い」



「えっ?」



何か呟く百合さんに聞き返した時だった。



「…殺したい」



本当に目の前に居るのは百合さんなのか。何もうつさない瞳は若よりも冷たいんじゃないかというほどで。



その綴られた言葉に俺は一歩も動けなかった。

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