第62話

何かが潰れる音と同時に、向き合っていた百合さんの胸元が一瞬で汚れた。それはドロッとした黄色い…


たまご…?



「きゃっ…!」



百合さんの小さな悲鳴と、さらに一つ飛んできたそれは百合さんの足下も汚す。



「てめぇ!!」


「捕まえろ!!」



すでに側まで来ていた見張りによって捕まったのは、30後半ほどの美魔女とも言われるであろう女で。手にはまだ投げつけるためか卵を持っていた。



タバコに火をつけたとき、この女が遠くから歩いてきていたのは俺も視界に入れていた。



何も…感じなかった。



普通に通り過ぎると思った。


ビルの前ですら守れない自分が情けなかった。

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