「オーナー。あまり百合さんとお話しするとうちの若の機嫌を損ねますよ」

百合ちゃんの肩を後ろからポンと叩けば俺の後ろへとすぐさま隠した。

「透さん、長々と話しすぎましたね、失礼します」

百合ちゃんと話せて満足したのかそそくさと帰るオーナー。

「透さん、百合さんすげぇ人気ですよ、流石っすね！」

早速俺に嬉しそうに話してくる直樹だけど、百合ちゃんはそうでもなさそうだ。今もいつもの崩さない笑顔でいるけど…

俺がを後ろに隠した瞬間、ほっとしたような顔を見せた百合ちゃんを俺は見逃さなかった。

身内からも外からも、想像の百合ちゃんが着実に作られていく毎日。その重みに耐えきれなくなった女神の心はもう取り返しのつかないところまできていたんだ。

俺らでフォローをしないと簡単に壊れてしまう。そう思っていた矢先、弱った心につけ込む事件がついに起きた。

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