第53話

「チッ…」


すぐさまドアを開けた秋。走るように部屋を出てエレベーターへ乗り込んだ。




「前だけに気を張ってればいいと思ってんのかね」




笑顔だがぶち切れてるような透。それもそのはず、この間出掛けた時に見せた百合の笑顔。あれは言いたかったことをため込み、自分に言い聞かせるために貼り付けた笑顔。



もともと人に関心のなかった百合だ。今までも余計な問題を起こしたくなかったんだろう。顔に貼り付ける嘘の笑顔。それが無意識にクセになってるんだ。でもそのクセは、



いつか自分を殺すことを俺らは知ってる。



きっと今も百合は…



エレベーターが開きホールを突き抜け見張りのとこまで行けば聞こえてきた声。




…やっぱりな。

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