第50話

「何回目ですかね」



「あれから毎日だろ?」



「若たちも大変ですね」



若?大変?その言葉が私にもっと聞き耳を立てさせた。



「まぁ、みんな羨ましいっすよね。若の隣にいれたら」



「そりゃそうだろ。男でも惚れるんだから」



「百合さんも美人過ぎて何も言えない奴らの仕業っすよね、どうせ」



私?なんだか嫌な予感がした。



「幹部部屋行って渡してきます」



「頼んだ」



そう言って何かをグシャッと持ち、立ち上がり振り返った瞬間



「ゆ、百合さん!!!」



私に見られていたことを知ってすごい動揺を見せれば、その手にはかなりの枚数の紙が握られていて。その一枚がこぼれ落ちたときだった。



「えっ…?」


ひらひらと床に落ちたものを見れば、真っ白な紙一面に赤い絵の具のようなもので大きく書かれた一言。



たった一言。



でも、その言葉で私の時が止まるのは充分だった。

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