第13話

「百合…」



グイと腰を引かれたと思ったら耳元で熱く呟かれた名前。顔を向けなくても分かる。



「はやてっ!」



いつの間にか私の後ろに立っていて片腕では余るほど、軽々私の腰に腕を回せば耳元に顔を寄せてきていた。



「これだろ?」



そう言い私の手を取りはめたのは婚約指輪。探していたものが元の場所に戻ればホッと一息つけた。



「ありがとう」



指輪をそっと包み颯にお礼を言えば、未だ密着する体に颯の色気を当てられクラクラする私。



顔を見てない私でもこうなるということは…。



前を向けば想像通り。目の前で颯を見ている直樹君はゆでだこのように顔が真っ赤になっていた。

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