第49話

Ⅱ【旅 3】〔真実の物語〕p49


永遠の耐久性を持つ透明球に包まれたアンドロイドは不滅だ。


ロピウスとジュリアの満たされない激しい状態の魂を持ったまま、永遠の時を苦しみ続けなければならない。


二人を救う方法はただ一つ、本物のロピウスとジュリアが結ばれること。


そしてそれは、二人の犠牲になってしまったビックバン以前の総ての魂達を救うことでもあるのだ。


しかし、ロピウスの魂はジュリアの魂を見失っている。


何処かの星の生命に宿り、ロピウスを探している可能性がとても高く、ロピウスの魂がそれを感じ取っている。


ヘムラムに課せられた使命は、ジュリアの魂を探すことだった。



ヘムラムは大きく溜め息をついた。


しかし、自分が背負っているただならぬ宿命との重味に圧倒されて号泣した人間くさい彼の姿は既に無くなりかけていた。


ただ、その人間くささこそ、自分にとって最も大切なものであり、それを失うことの恐さ、まだ存在することの愛しさを強く感じていた。


自分の前途に戦きながらも、大きな溜め息一つで、たった一人立ち向かおうと背筋を伸ばせるロピウスの魂の偉大さと、それについて行ける人間という生物の強靭さに改めて心打たれるのだった。


ロピウスとジュリアが結ばれるということは、その魂の引き継ぎとして二人の子孫を生み出せる状態に持っていかなければならない。


ジュリアが人間のような生物に依存しているのであれば、同じ人間の純粋な男と女として結ばれるようなシチュエーションが必要だ。


もちろん他の生物、例えば虫なら同種の虫、花ならやはり同種の花でなければならない。

虫と花でも、人間と他の動物でも駄目だし、同じ人間でも子孫を生み出せない関係、つまり同性同士だったり血縁者だったりでは結ばれることは無く、お互い激しい魂ゆえに苦しんで苦しんで終焉を迎えることとなる。


しかし一度出会えば、魂はその星で再び出会い結ばれるまで何度でも輪廻を繰り返す。



まずヘムラムは自分にとって一番身近な地球の人間としてジュリアの魂を探す為地球へ戻り、人間を培養してロピウスの魂を植え付けることにした。

そう考えたと同時に、ロピ星は透明球の飛行物体となり地球へ向かった。


地球は既に最初の氷河期を終え、第二文明を築いていた。


大陸の形も可也変わっていたが、ヘムラムが住んでいたと思われる場所に異次元空間を造り、そこで幾種類もの人間を培養し、生き残りのささやかな魂をそれぞれに宿らせ、自然発生した人間達と馴染ませることにした。


ロピウスの魂を入れた人間は、その魂の持つ膨大なエネルギーがチャクラのような宇宙との繋がりとなって、正確な星形のアザとなった。


人間の培養が終わるまで、ヘムラムはアンドロメダに戻り、アンドロメダ銀河の星々の中でもジュリアの魂を探し回った。


突然地球の培養所から緊急警報のメッセージが届いた。


すぐ地球に行ってみると、ロピウスの魂を宿った人間の胎児が、人口子宮の容器ごと引き抜かれていた。

盗まれたらしい。


地球の現実空間と90度ずらした次元に設えた培養所なので、地球上の生物が入り込む余地などあり得ない筈だったが、ちょっとした地軸の揺らぎが生じたのかもしれない。

ロピウスの魂の凄まじいエネルギーが及ぼした可能性も有る。


特に胎児が成長する時に発する特殊なエネルギーが重なった場合のことを考えると、その可能性が最も高い。


培養器から離された胎児は即死する。

人間の殻は既に息絶えているだろう。


魂もとっくに戻っていることをヘムラムは感じ取っていた。



ヘムラムは地球に引かれるものがあった。


ジュリアは地球で待っている。

そんな潜在意識が常に彼を突き動かしているのだ。


それでなければ、自分が人間として地球上に降り立った意味が無いではないか。


最終的には、培養人間に与えたようなロピウスの魂の一部では無く、総てを使って地球を調べようと心に決めていた。


そのためにヘムラムは、最終段階を迎える前、総ての銀河を巡って探索してしまおうと思った。


時空間をコントロールしながらの旅ではあったけれど、それでも気の遠くなる時間を費やし、途中3度ほど寿命を迎え、その都度魂と肉体を切り離し自分の子として甦らせることを繰り返した。


この宿命を果たす為のマニュアルも整えておいた。


探索をするに当たって、あちこちから様々な魂を拾い集め、魂の透明球の数もどんどん増やし、アンドロイドも数多く造って手伝わせた。


そして最終探索地『地球』に舞い戻って来たのは、ヘムラムの息子の息子の息子ヤミだった。


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