第48話

Ⅱ【旅 3】〔真実の物語〕p48


ロピウスとジュリアの細胞を構成する原子の一つ一つである星が次々と破壊されていく。


もちろん二人にとっては目に見えない程小さく、ささやかな存在だっただろうけれど、その総ての中に確かな営みがあったのだ。


知的生物を生んでいた星も多数有ったに違いない。

崩れゆく我が身を悲しみながら、ロピウスもジュリアもハタとそのことに気づいたが、既に遅かった。


悲鳴のような轟音を宇宙中に轟かせ、二人は消え失せた。


爆発の余波があちこちの銀河にまで及び、それが連鎖して全宇宙を侵食していった。

ロピウスとジュリアが生きていた部分は、一つの巨大なブラックホールとなり、宇宙そのものを飲み込む勢いで周りのものからどんどん吸収し続けた。


ブラックホールは、餌食を吸収すればするほど質量を増し、目眩のする時間をかけて宇宙を食らい尽くした。


宇宙はブラックホールに飲み込まれながら収縮を続け、ブラックホール自体も縮んでいった。


これ以上収縮不可能、質量最大となった時、その膨大なエネルギーは外へ広がる方向へ変換した。



ビックバン!!

宇宙自体の大爆発!!


一旦最小まで縮んだ宇宙がまたもの凄いスピードで広がり始めた。


ある程度安定した宇宙が出来上がるまで、想像を絶する時間と混沌が続いた。


再度星が誕生し、銀河を造り、生物を育む星が生まれ出しても、宇宙は超スピードで広がり続けた。

その放射状の広がりは、永遠に止まらないだろう。


もし広がりが静止したら、その瞬間から再び収縮が始まる筈だ。



ロピウスの魂は、宇宙そのものを飲み込んだ凄まじいブラックホールと化したわけだが、ビックバンと同時にそのままのエネルギーで小さな星となった。


ビックバンの時魂の一部が欠け、混沌の中をさ迷って、宇宙全体が落ち着いた頃ロピウス星(通称ロピ星)の有るアンドロメダ銀河の隣に位置する銀河の地球という星に辿り着いた。

そして人間という知的生物の中に入った。

名はヘムラムと言った。


その頃の人間は、その後に自然発生するであろうと予想される地球上知的生物のシュミレーションとして、ロピウス以外の生き残った魂が培養し造り上げたもので、殻は人間でもその魂は総てビックバン以前の星達のものだった。



ロピウスが自分達の身代りとして旅立たせたロピウスとジュリアのアンドロイドは、そのまま旅を続けていたが、ビックバンの時に過剰な電荷を帯び、磁場を発生した。

それが二人とも同じ磁極だった為、近寄ると反発し合い弾き飛ばされ、それも可也莫大な磁力だったので、銀河系越しの距離が二人の近づく最短だった。


それだけの磁場を持ちながら同じ場所にとどまることは、他の星への影響など多大な危険を孕んでいるため、二人とも移動を続けながらの逢瀬となった。


銀河系越しの逢瀬は地球時間で一年に一度の割合で7月7日前後。

そう、織姫と牽牛はジュリアとロピウスの魂を持つアンドロイドだったのだ。

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