第47話
Ⅱ【旅 3】〔真実の物語〕p47
ロピウスという宇宙一大きな星雲を治める宇宙の子があった。
その隣にジュリアという各銀河の統制を司る美しい女性の宇宙の子があった。
宇宙の子は互いに接触することを許されていない。
星の配列で出来ている宇宙の子達が接触することは、星達の衝突であり、それは宇宙そのものに多大な影響を及ぼし、破滅さえ免れないからだ。
そんな中でロピウスとジュリアは恋に落ちた。
彼等はとてもよく語り合った。
二人とも、神と呼ばれるに相応しく誠実で真摯で強さに裏打ちされた優しさを持ち、純粋さと表裏一体の激しさも持っていた。
互いを尊敬し合い、見守り合い、労り合い、励まし合い、支え合って、星々の平和や宇宙の行く末を深く
他の宇宙の子達の暴挙にも、何らかの対策をたてなければと真剣に悩んでいた。
そんな二人を親なる宇宙も微笑ましく見守っていた。
しかし、だんだん二人とも語り合うだけでは満足出来なくなっていった。
互いに、いつもでき得る限り近くに居たいと感じ始めた。
その柔らかい髪に触れ、頬を撫で、ひんやりとした美しい手の感触を得たいと切望するようになった。
二人が触れ合うということは、宇宙の破滅を呼ぶ可能性があることも重々承知していた。
満足感を肉体に依存するということは、退化することだとも分かっている。
だがそういう捉え方そのものが
新旧様々な星々を統治する立場である宇宙の子として、その感覚は失格ではないのか?
そもそも我々宇宙の子とは、いったい何なのか?
何を成すべきで何を成してはいけないのかを決めているのは誰なのか?
どこまでその掟に従わなければならないのか?
もしそれが親なる宇宙によるものなら、宇宙とは何者なのか?
ロピウスとジュリアは生まれて初めての大きな迷いに直面し
彼等は深く悩んだ。
そしてある結論を見い出し始めた。
その頃、他の宇宙の子達の横暴ぶりが目に余ってきていた。
宇宙の『統治』の筈が、『君臨』する『神々』の影響で、宇宙戦争に発展する日も遠く無いだろう。
ロピウスとジュリアが愛を貫くことで、この宇宙を変えることが出来るかもしれない。
その為にも二人の犠牲が強いられるのなら喜んで受けよう。
この時二人は、宇宙の子である自分達が、自分という存在以前に一つ一つの生きた星から成っているという事実の及ぼす影響の片面しか考えられない程、恋に溺れていた。
ロピウスはジュリアの儚げに彷徨う手にそっと触れた。
ほんの一部だったが、途端にその部分の細胞を構成する原子としての星々が衝突し、強い稲妻を発生させ爆発した。
二人はしっかりと手を握り合った。
次々と星の爆発が起こり連鎖して、あっという間に二人の肩の付け根近くまでの星団が大破消滅した。
二人の宇宙の子の犠牲では無く、小さな星々が犠牲にされていることなど、既に二人には、見えなくなっていた。というより見ようとしなかった。
或いはそれが、肉体を失って反乱を起こした星々の究極の目的だったのかもしれない。
ロピウスは、自分とジュリアを模倣したアンドロイドを造り、濃縮したそれぞれの魂を与えて透明球に一人づつ乗せ、宇宙の彼方へと放った。
そしてとうとう二人は固く抱き合った。
挿し絵です↓
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