Ⅱ【旅3】〔真実の物語〕

第46話

Ⅱ【旅3】〔真実の物語〕p46


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ロピは、天才的な頭脳を持つヘルラムでさえ想像もつかないほど荒唐無稽な物語を語り始めた。


★★★ 宇宙が生まれる前、つまりビックバン前、もう一つの宇宙が有った。


その宇宙は今の宇宙と似ていたが、今の宇宙より多くの星が有り、必然的に銀河ももっと数多く、密集していると言ってもいい程だった。


当然知的生命の存在も生半可な数では無かった。


その為かその宇宙は現在の宇宙より遥かに質的な密度が濃く、必然的に生命の源であるアミノ酸始め、全ての物質、全てのエネルギーが濃厚だった。


当然太陽系のような恒星系も無数に存在し、ハビタブルゾーンに位置する惑星も膨大に有り、人間に近い知的生命も次々に誕生した。


知的生命達は、各々の文明をそれぞれ時間をかけてじっくり成熟させ、長寿な星は最終的にスピリチュアルな世界に到達することが殆どで、一切の物質的存在を否定し、魂などの存在だけで永遠の生を目指す種族が増えていった。


果てしない時間で濃縮していった魂達は、その強いエネルギーが科学変化を起こし星を形成した。


魂から成る星達は、宇宙自体の意思か、はたまた偶然か、いずれも永い永い時間をかけて部分的には人間のDNAに近い不思議な配列を造り出し始めた。


遥かな時間をかけて、星達は細胞組織を造り、星達の源である魂のエネルギーがその細胞を活性化させた。


少しづつ少しづつ銀河は人間の胎児の姿を映し出し始めた。


それは成長しながら、はっきりと形有るものになっていき、動きさえ見えるようになった。


姿は人間だが、呼吸器や消化器は全く別構造で、宇宙そのものに依存する形をしていた。


つまり、水槽の中で育てられている魚のように、銀河からなる超巨大な人間の姿をした『生き物』を宇宙が育てたのだ。


元々DNAから始まって全ての細胞が、善も悪も超越して純粋な魂に到達した星から出来ているので、その子は最初から澄んだ精神と多大な知性を持っていたが、父なる、そして母なる宇宙はより多くを教え、星々を治めるよう導いて いった。


宇宙の子は、全ての星全ての銀河を統治しながら大人へと成長した。


まだ人間程度の生物が生きる星では、彼を『神』と呼んで崇めた。


宇宙の子によって統治された平和な時間も可也の間続いたが、数千億年を超える時間を経て、年老いた宇宙の子は自分の後継者への引き継ぎを考えるようになり、他の銀河で自分と同族の超巨大人を造ることを提案し、宇宙もそれを承諾した。


親なる宇宙と宇宙の子の共同作業で、複数の超巨大人が生まれ、その者達も宇宙の教育を受け、それぞれが分担して星や銀河を統治し、やはり蛮人には『神』と呼ばれた。


宇宙の子達は出来るかぎりスムーズな統治が出来るように少しづつ人数を増やされたが、その数が増えれば増えるほど、人間くさい野蛮な感情が芽生え始めた。


傲慢さが目立ち出す者や、支配欲に囚われる者などが現れ出し、互いに牽制し合う者同士もあった。


文明が可也進み、もう一歩でスピリチュアルな世界を得られそうな平和な星で多少の逸脱が見られると、『地獄に落とす』と称して、まだ人間程度の文明を維持している星にその逸脱した魂を送るなどして、知的生命を持つ星々を支配し君臨する宇宙の子もあった。


しかしそんな時、人間のような種族の生き方の辛苦を地獄と感じて嘆き悲しむ者が居る一方で、肉体を得て新たな幸福を感じ、間違って天国へ送られたのではないかと喜ぶ者も居た。

そういった者達は、『肉体は滅びる』という事実だけが、まさに地獄だった。



そのうち魂から成る星達の間にも、肉体に対する意識の回帰的な現象が表れ出した。


肉体を持ち、物質に執着して生きていることの不自由さや残酷さを知り尽くし、物質的な存在に意味を感じなくなって魂交信だけのスピリチュアルな世界に到達した筈が、肉体を持つということに強い憧れを抱き始めたのだ。


魂が、星という物質を育んだこと自体その兆候だったのかもしれない。


だからこそ、魂から成る星達は自分達の意思で宇宙の子を生み出すべく肉体という物質を造る為の配列を根気よく続けたのではないだろうか。


星達を、延いては宇宙そのものを統治させる為に親なる宇宙によって育てられ教育された宇宙の子達に至っても、やはりその現象は顕著だった。

いやむしろ、そんな星達から造られた宇宙の子であるからこその当然の成り行きとも言えよう。


或いは、肉体を『失った』魂の、想像を絶する時をかけた反乱だったのかもしれない。

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