第41話

Ⅱ【旅】〔輪廻〕p41


私深雪の魂を持つハトラは、生存した人類の中で2番目に幼い年齢だった。


乳飲み子の男の子が奇跡的に助かり、3歳のハトラもヤミの手によって助けられたのだ。


親兄弟を始め何もかも失い、天涯孤独な身となった幼いハトラが経験するには、総てがあまりに衝撃的なことばかりだったが、気にしてくれる者はあっても皆それぞれに自分のことで精一杯なため、乳飲み子のような手のかけ方をしてもらえるわけでも無く、寂しさとショックで少しづつ生命力を失い弱っていった。


ヤミは救出する時点から何かとても気になっていたハトラを、自分の娘にしてもいいと思っていたし、ハトラ自身も他の人間より異星人のヤミに不思議なくらい安心感を抱いてべったり頼っていた。


が、如何せん事態が事態なだけに、ヤミが100%ハトラの要求を受け入れ精神的な支えになることは難しかった。


次第にハトラは分裂症状態に陥り、外部との接触を頑なに拒むようになって、飲食さえも拒否するようになった。


ヤミは必死でハトラの心に直接語りかけることを試みたが、頑ななハトラの心の扉を開くことは出来なかった。


分裂病は、ゆっくり時間をかけて心を解いていくことで快復可能だ。

まして、ヤミ達の高度な文明の力を持ってすれば100%治すことが出来る筈だった。


しかし、ハトラがまだ幼児で、語りかけを理解する能力に乏しいうえ、ハトラの魂が人類とは思えない程純粋で強固で膨大なエネルギーに満ちていることや、経験したトラウマが途方も無く巨大なものだったことなどが快復を妨げた。

というより、頑として拒否したと言った方が正解だろう。


ハトラの魂は既にこの時間と空間で生きることを完全に諦めているようだった。



ハトラは呆気なく死んだ。

そしてヤミは、その時初めてハトラが自分と同じ星形アザを持っていたことを知った。


ヤミは驚くと同時に愕然とした。

途方も無い時間と空間をかけて代々探し続けてきたものが、この地球に、それもこんな身近に居たというのに、総てお終いになるまで気づかずに居た自分が許せなかった。


生きる気力は完全に失せている。


ヤミは、ハトラの濃い魂とDNAの透明球を、新人類の母体から生まれ出るようにセットして送り出した。


それからのヤミはどんどん年老いていった。

気づけば確かにヤミ達種族の平均寿命を遥かに越えた年齢に達している。


タイムコントロールした透明球の中でほぼ半年が経過しているうちに、地球では氷河期が終わり、新たな人類が誕生し文明を築き始めた。


待機していた旧人類を地球に送り届けると、ヤミは自分のDNAと魂が

自分の子としてこの母船で甦るようセットした転移装置に横たわり、生命維持装置をOFFにした。


星形アザを持つ者が地球の生物として存在することを、すぐ甦るであろう息子としての自分に伝える為の記録も残した。

息子の名前をトゥーとすることも。


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                     21世紀に生きた研治さんの祖先、たぶん私の祖先も異星人だったのだ。

しかも私の憧れだったアンドロメダ銀河の中に有る星の………


今、宇宙の質は可也変化している。


私達の銀河系は既に他の銀河と衝突合体して、いくつものブラックホールを持った物凄い質量の楕円銀河となっている。


そうなんだ…………あのアンドロメダ銀河と合体したんだ…………

私達の銀河系とはお隣りさん同士だったもんね………


とすれば、私が生きていた時代からもう37億年以上は経っているということだ。


地球の祖先の星も既に無くなっているようだ。

自滅したのか、星同士の衝突によるものか、それとも巨大銀河のブラックホールに吸収されたのか?……

もし存続していたとしても、もう生物が住める状態では無くなっていただろうけれど。

どんな最期をを迎えたのか……………

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