第18話
Ⅰ【今はさよなら】p18
まるで救いの手が私に差し伸べられたようだった。
自分肯定の出来なかった私が、自分を肯定しない限り達成出来ない、妊娠、出産、育児という大役を与えられたのだ。
赤ちゃんイコール死というトラウマを抱えた私にとって、無事な出産育児は言わばこれからの私に対するレスポンスのような気がした。
そして私は、自分に課せられた大きな責任に自信を持ち、『必ず責任を果たす』という強力な闘志さえ生まれ始めた。
出産直前まで続いた猛烈な
長かった苦しみから解き放れた解放感と、苦しみに耐えて無事に生まれてくれた我が子に対する感謝の気持ちは人一倍なのに、暫くは現実感が無く、この幸せが信じられなかった。
本当に私が産んで、本当に元気で、本当に五体満足なのか。
苦しみだけ与えられて赤ちゃんは別のところから持ってきたのではないかと思うくらいだった。
事実妊娠前までは、私の性格で育児なんかとんでもないと思い込んでいて、避妊にも抜かりは無かったつもりだし、冗談抜きで宇宙人の子でも身籠ってしまったのではないかと思ったりした。
いつか覚めてしまう夢だったり、突然居なくなったりするのではないかという不安は際限無く続いた。
何があっても失われること無く、永遠に輝いてほしい願いを込めて、娘には『星子』と名を付けた。
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強烈なGがかかったような鳥肌立つ感覚と共に、私自身の意識が私の魂へと戻ってきた。
つい今しがたまでの意識は、星子のお母さんのものだったのだ。
彼女をそのまま私が体感していたのだ。
私は暫く呆然として、いつもハキハキと明るい星子のお母さんの半生に思いを馳せた。
そして彼女の傍に移動し、心なしか苦し気な寝顔を見つめながら、もう1度彼女の魂の中へ入っていった。
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