第7話
1【今はさよなら】p7
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・・・・・今俺の頬に触れたのは、深雪…君かい?
そこに居るのかい?
あぁ、でももう君の気配は無くなっている。
成仏できて、天上に行くんだね……
俺はふと上を見た。
寺の、曼荼羅の高い天井画世界へ溶け込むように吸い込まれていく一筋の靄があった。
その靄の中に深雪の視線を感じて、俺は靄を見送りながら、溢れ出した涙を抑えることができずに思わず嗚咽した。
靄も、苦しそうに漂いながら暫く俺の方を見つめていたが、そのうちフッと俺のすぐ傍らまで戻って来て、俺の顔中をめちゃめちゃに濡らしている涙を拭うような風となって触れたと思うと、一気に上昇し、再び曼荼羅の世界へと吸い込まれて行った。
俺は、読経と線香の煙の中を一人外に出て、曼荼羅が有った辺りの屋根から上空を見上げた。
靄は既に寺の屋根30㍍程上空まで上昇しており、じっと俺を見つめるように留まっていた。
しかし俺が「深雪ちゃん………」と呟いた瞬間光の筋となって急速に上昇し、漆黒の闇へと消えて行った。
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最後の力を振り絞って、星子の手を握ってみた。
私の手は虚しく星子の華奢な手をすり抜け虚をさ迷った。
しかし、私の魂が風となって星子の手を撫で、心に呼び掛けることが出来たらしい。
私に応える星子の魂を私も感じることができた。
・・・・・星子………今最後の別れを告げに、君の傍まで来ているんだよ。
本当に有り難う。
お父さんお母さん、由利子………
最後に私は研治さんの傍で、暫く研治さんの悲しみを共に味わった。
とてつもない闇だった。
旅立ちの時が迫っている気配に急かされて、私は思わず研治さんの頬に口づけた。
またしても虚しくさ迷う私の唇………
私は天からの力に引かれて、天井まで昇った。
しかし、研治さんも私を感じることが出来たらしい。
私を探している。
涙が止めどなく流れ出し、全身震えながら研治さん自身の魂で私を呼び続けている。
でも私を見つけられず、再び闇の中へ戻ろうとしていた。
私は旅立ちへ誘う大きな力を振り切って、再度研治さんの傍に戻ると、拭えないと分かっていながら、その頬の涙に手を伸ばした。
魂の風が研治さんの頬を撫でた。
研治さんもそれに気づいたらしい。
私は思いきって旅立つ決心をした。
宇宙からの力に一瞬身を任せた時、私を追って寺の外に駆け出してきた研治さんの姿を見た。
研治さんも私を見つめている。
私は研治さんに「さよなら」では無く、「また必ずお逢いしましょう」と告げて、今度こそ完全に宇宙の力に身を委ねた。
挿し絵です↓
https://kakuyomu.jp/users/mritw-u/news/16818093091938980582
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