第30話 みたび故郷を離れるアウレリャノ・ブエンディア大佐と、自分が幸せになることを許せないアマランタ

アウレリャノ・ブエンディア大佐を取り巻く戦況は、彼の思い描くものとは程遠かった。自由党の指導者たちは議会の議席を得ることに汲々としており、自由のために戦っている大佐を山賊呼ばわりし、自由党とは無関係だと主張している。党と敵対した大佐と大佐の軍団は行き場をうしなっていた。


――党の腰抜けどもが。われわれのやっていることは時間の無駄だ。


先行きをピラル・テルネラに占ってもらうと「口に気を付けろ」と結果がでた。どういう意味かピラル・テルネラにもわからない。しかし、その意味はすぐに分かった。大佐の飲むコーヒーに馬一頭を殺すに足りるストリキニーネが仕込まれていたのだ。ウルスラの看病のおかげで一命をとりとめた大佐は、ベッドの上でこれまでの戦いを振り返り、戦局打開のために内陸部の反乱グループと共闘する決意を固める。


みたびマコンドを離れたアウレリャノ・ブエンディア大佐から町長兼司令官に任命されたヘリネルド・マルケス大佐は、大佐に妹であるアマランタに恋していた。ヘリネルド・マルケス大佐は、政府軍によって営倉に軟禁されている頃から、「ここを出たら君と結婚する」と言っていた。アマランタは、内心ではヘリネルド・マルケス大佐に好意を抱いていたが、気のないふりの言葉ばかりが口を突いてでてしまう。正式にプロポーズされた時も、口にしたのは拒絶の言葉だった。


――わたしは結婚しないわ、誰とも。とくに、あなたとはそうよ。あなたがほんとに愛しているのはアウレリャノだわ。あの人と結婚するわけにいないので、それで、わたしと結婚する気になったのよ。



反乱軍として各地を転戦するアウレリャノの行動をいちいち描写するくだりは退屈である反面、とても想像しやすくわかりやすい。コロンビア内戦に関する知識は全くないので、なんのこっちゃと思いながら読み進めているのですが、戦争ってのは思いのほか理解しやすい。


アマランタというい人は、ほんとうに気の毒な人だと思う。レベーカとピエトロ。クリスピを争って負けてしまったことから歯車が狂い始めてて。恋敵である姉のレベーカを過剰に呪ってしまった結果、無関係のレメディオスを呪い殺してしまったと責任を感じていて、自分は幸せになってはいけないと思い込んでいる。思いを寄せてくれたピエトロ・クリスピを死に追いやってしまい、いままたヘリネルド・マルケスを拒絶してしまった。自分も周りも不幸にしていく人です。いますね……、こういう人。

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