第57話
「美味しい?」
『はい。おいしいです。紅茶も』
「よかった。駅前のカフェのケーキなんだけどね、イートインだとガトーショコラにホイップついてくるの。それがお気に入りでよく行くんだ~」
のんびりとした会話が、流れる時間を埋めていく。
未緒さんの隣って、こんな感じなんだ。
こんなふうに、ゆっくりした時間はいつぶりだろう。
ライブ続きでプライベートが少ないのもあったけど、休憩中でも仕事中でも、常に夕さんのことばかり考えていたから…
深く考え事をせずに、目の前のものに集中できる時間が、こんな落ち着くなんて。
『…未緒さん』
「ん?」
『…ありがとうございます』
「えー、じゃあ、私もありがとう」
『え、なんで?』
「おかげでケーキ2つも食べれた」
ご機嫌に笑う未緒さんは、やっぱり気を遣って、いつもより明るい。
おかげで平常心を保っていられる。
『ふは…僕もそれは嬉しかったです(笑)…でも、本当、こんな…情けない姿になるとは思わなかったので…』
「…話したくなかったら、言わないでいいからね」
『…未緒さんには、聞いてもらいたい、です。今日のこと』
「…わかった。聞く!」
ソファを背もたれに、体育座りで、僕じゃなくテレビのある壁の方をまっすぐ見ながら未緒さんが言った。
…顔、見ないようにしてくれてるのかな?
また、僕が涙を流すのを予想して。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます