第51話
小さく響いた声に、体が一瞬にして固まった。
その声は、確かに夕さんのものだったけど、明らかに普段と様子の違う、”甘い声”だった。
咄嗟に、見つかってはいけない恐怖を抱きながら、それでも、角から少しだけ視線を送る。
そこには2人の影が伸びていて、男性が女性の腰に手を回して、かなり密着している。
「もう……。片付けあるから…」
「ん、ごめん。でも、もう一回だけ」
静けさの中に、小さくリップ音が響いた。
それが本当にリップ音だったかはわからない。
見ることはできず、ぐるりと方向を変えて、裏口に向けて走り出していた。
…なんだあれ。
「お疲れ様でーす」
スタッフさんとすれ違っても、今は何も言えず、ただ頭を下げるだけだった。
「あれ、はやちゃん帰ってなかったの?今から快とやきに………」
楽屋の前を再び通るとき、ちょうど出てきた深繰くんに声をかけられたけど、その前を全力で通り過ぎた。
…なに、あれ……
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