第34話

『………』




ゆうさんは、最初はCDとか曲制作のほうのスタッフさんだったんです。そのあと、マネージャー部門に異動になって。あっという間にチーフマネになって…」




……あれ?




視界が真っ暗。右肩があったかくて、耳元で彼の声が聞こえ………




「そのくらいからですかね?なんか特別に思うようになったの。好かれたくて、いい子演じちゃうし、ギターも夕さんの勧めで始めて…」




『っ!ごめんなさい!』




「うわ、びっくりしたっ!…おはよーございます(笑)」




『…おはよう…?…じゃなくて、本当ごめん…。あれ、なんで隣に居るんだっけ…?え、何の話?』




「あー、話の方は気にしないでください。未緒さん聞いてないのわかって、勝手に話してたんで…。て、何か変な人みたいだけど…」




こと、と目の前にお水を置いてくれた。




…やばい、寝てた…




しかも、アイドルの左肩を借りて…。





「眠そうではあったんですけど、急にクラクラするって手で頭支えてたので、僕がこっちきて肩貸してたんです。そしたらすぐ寝ちゃって」




『本当に申し訳ない…です…。肩痛くない?!重かったでしょ?』




「全然!あ、けど、右手でお箸使うの難しかった~(笑)もう体調大丈夫ですか?」




『平気…』




そういえば、左利きの彼がテーブルの料理をほとんど平らげてくれていた。…私のせいで右手で。




「未緒さん食べます?やめとく?」




『…やめとく…。ウーロン茶頼んでもいい?』




「もちろんです。頼みますね」




年下に迷惑かけて…申し訳ない……。




ひたすらに優しくて、もう涙が出そうだ…。

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