第28話
「ありがとうございましたー!」
店員さんからにこやかに紙袋を受け取る彼。
少し離れて待っていると、弾むような足取りでこちらへ近づいてきた。
「未緒さんのおかげで、いいの買えました!やっぱり相談して良かった~」
『買えてよかったね』
「はい。他見たいところありますか?…と言っても、閉店間近ですが…」
『あ、じゃあ、あのお店だけ行ってもいいかな?すぐ終わるから』
「もちろんです」
目的を達成して、少しテンション高めの彼と、反対に落ち着き切った私。
切り替えて、ずっと買おうと考えていたものを買うことにした。
「香水ですか?」
『うん。紅茶の香り』
「紅茶の。へぇ……」
一瞬、彼がマスクをずらして、香りを確認する。
綺麗な二重にふさわしい、綺麗な鼻だった。
…この顔に好かれたら、誰でも嬉しいに決まってるな…。
「あ、これいい香り」
『シトラスティーだって。…そういえば、シトラス系の香水してるよね?』
「よくわかりましたね。ほんの少ししかつけてないのに」
『人より鼻がいいのかも。友達が香水変えたらすぐわかるから』
「へぇ…。僕、これ買お~」
私が手に取っていたブラックティーの香水の横にあった、シトラスティーのボトルを手に取った。
香りは違うけど、シリーズものでパッケージがそっくりで、ちょっと、お揃い、みたいな。
「はい、未緒さんのも貸してください」
『え?』
「外で待っててください」
『え、いいよ、自分で買うから』
「今日のお礼です。じゃ、後で」
ひょい、と私の手からボトルを奪うとそのままレジへ向かってしまった。
お礼って…安いものじゃないのに、どうしよう…
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