第27話

「…あんまり大きい声で言えないんですけど、好きな人、でして。」




小声でささやかれた声。




「ちょっと年上の女性なので、こだわったものあげたくて」




これまでの情報からなんとなく、掴んでいたものが、彼の口からはっきりと押し付けられた。




『…そっか……』




「はい。あ、オレンジ綺麗ですね」




『そーだね……』




「でも、こっちのピンクの方が使いやすそう?」




『たしかに…』




”好きな人”を想い浮かべながら、あれこれと選ぶ姿。




…別に、まだ戻れるんだったんだけど。




…もう、戻れなくなってたんだった。

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