第25話

「何食べに行くー?」




「昨日の映画が……」





目の前を通り過ぎていく人の会話が途切れ途切れ、耳に入る。




姿を見なくとも、彼ではないことは確か。




また左手を上げてみると、18時15分。




体感5分ほどだったのに…




さすがに、とスマホのメッセージアプリを立ち上げる。




<h:ごめんなさい、少し遅れます。中のカフェでも入っててください>




10分前にメッセージが来ていた。




…遅れるのかぁ…




今か今かと、待ちわびていた瞬間が一気に遠のいた気分。




カフェに入っててってことは、結構遅れるのかな?




彼が急いで来てくれている姿を想像しながら、とりあえず返信をする。




送信後、すぐに既読がついた。




<h:どこいますか?>





あ、着いたのかも。




ぱっと顔を上げて、周りを見渡す。




駅のある左側に注目するけど、彼の姿はない。




「あ、いた」




待ちわびていた声が聞こえて、驚いて振り返る。





「中入っててって言ったのにー。寒かったでしょ?ごめんなさい、待たせて」





『ううん、勝手に外いたから…。駅から来ると思ってた…』





「あー……あ!僕あの店、気になってたんです。入ってもいいですか?」





彼の言葉に頷いて、暖かい店内に入る。




外から見るより、そんなに人はいない印象だ。

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