第21話

「…生きてる?」




聞きなれた声に顔を上げる、木曜日の昼休み。




『なんとか…?年末って、こんな忙しかったっけ…?』




「営業はそうでしょうね」




自席に突っ伏していたら、数少ない同期で、東京での唯一の友達でもある、藤城ふじしろ 真綾まあやが隣の空き机にお弁当を置いた。




昨年までは同じ営業部の、隣の係で、同じ営業事務として働いていた。




今年、総務部に異動になってからも、郵送物を持ってきてくれたり、ランチは一緒に過ごしたりと、いろいろ気にかけてくれる、見た目も心も美人さんである。




『…あ。飲み物持ってくるの忘れた』




「え?ばかなの?」




…少しだけ、毒舌だったりもする。




『真綾何か要る?自販機行ってくる』




「ホットコーヒーで」




『はーい』




忙しすぎて、午前中、水分をとることさえ忘れていた。




廊下の突き当りの自販機へ向かう。




真綾は手作りのお弁当を広げて食べ始めていた。




そういう、気を遣わない感じがまたいいんだよなぁ…なんて思いながら、自販機のボタンを押す。




決済のためにスマホを自販機に近づけると、画面が変わる。




<着信:h>




『えっ!』




突然の出来事すぎて、会社なのに思わず声をあげてしまった。




約束…の話かな…




真綾のは、食後のコーヒーだし…少しくらい、いいか…

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