第20話

「じゃあ、また連絡します」




スマホを片手に、駅へと向かう彼の背中を見送る。




プレゼントを探しに、百貨店に行く約束をした。




彼は忙しいみたいで、予定がその日にわかることもあるらしい。




日にちを合わせるのも、すぐには難しいから、とスマホを取り出した彼と、メッセージアプリの連絡先を交換した。




アカウント名は、”h”の一文字だけだった。




角を曲がるまで彼の後ろ姿を見送って、部屋へと上がる。




リビングに入ったと同時に、スマホがメッセージの受信を知らせるべく震えた。




<hがスタンプを送信しました>




<h:そんな見られたら、穴あきます(笑)>




可愛いポメラニアンが”よろしくね”と言ってるスタンプと、メッセージが届いていた。




…見送ってたの、ばれてた……




メッセージを見ながら、嬉しいやら緊張やら恥ずかしいやら、何ともいえないこのニヤついてしまう感情を久しぶりに抱く。




…大丈夫、まだ戻れる。




…はず。





<にしおり みお:気を付けてね。おやすみなさい>





急いで打ち返したメッセージを、ゆっくりと慎重に読み返して、間違えがないか確認してから送信。




期待に反して、送ったメッセには既読が付かない。




…まぁ、駅に向かって歩いてるときだし、スマホ見るの危ないもんね…




そう言い聞かせて、買ってきたのも忘れていたコンビニの袋をテーブルに置いて、夕食をとることにした。

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