第17話

『さむ……』





2日後の月曜日。





先週から持ち越していたものと、今日急ぎで頼まれたいくつかの仕事とひたすら向き合って、やっと退社できた22時すぎ。





いつもより遅くなってしまった。





会社を出た途端、冷たい風が頬を刺す。




急ぎ足で駅へと向かう。





温かい電車内に一歩入ると、仕事から逃げられた安堵感と、凍えていた手足が温まっていく感じに、ほっとする。




寒すぎてイヤホンもつけていなかったので、席に座るとすぐにイヤホンと音楽アプリを準備する。




まずは…最近の定番になっている”雨音”を。




目を閉じて、音に集中する。




ピアノの一音のあと響く高音は、何度聞いても鳥肌ものだ。




乗り換えの駅について、人の少ない路線の電車に乗り込むと、無意識に彼の姿を探していた。




また、とは言われたけど、約束はしていない。




これまでもこの路線を使っていたけど、彼を見たっていう記憶はないし…




まぁ、いつも下向いてばかりだったんだけど…。

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