第15話

『えっと、お金…』




「あ、ほんとに要らない!です!貰っていただいて助かったというか…」




『でも、私は楽しかったし…』




「捨てるとこだったので…。いや、…まぁ、そんなもの渡すなんてって思われるだろうけど…。僕の悲しい気持ちを、救ってくださってありがとうございました」





ぺこ、と軽く頭を下げられる。




チケットのぐしゃぐしゃ具合から、”捨てるとこ”というのは本当のことなんだろう。





『…じゃあ、こちらこそ、ありがとう…』





彼の優しい視線に、私も頭を下げた。




相変わらずマスクと帽子で、お顔はあまり見えないけど、ふんわりとした笑顔が可愛い。





「…えーと、名前…。何さん?」





『…西折にしおり





「…西折、何さん?」





『…未緒みお





「未緒さんね。未緒さんはいくつ?にじゅうー、3歳くらい?」




『えぇ?!…いや、2…にじゅう、なな。』




名前を聞かれたから、聞き返すタイミングだったのに、かなり若く見積もられて嬉しくなってしまった。





「え、見えない!じゃあー、7歳差かな?」





『20歳?若…』





「ふは。まだ19だけど、もうすぐ20歳です」




…ひぇ…若…!





大学生だとは思っていたけど、20歳だったとは…





私ももうすぐ28歳になるけど、それは言わないでおこう…

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