第10話

「今日ねー、深繰くんがリハのときさぁ」




「あー、その話する?やる?この後誰かやっちゃうかもよ?」




「可能性はあるね」




「あ、そこの段差につまずいて転んだって話?」




自己紹介の後も、ゆるい会話が続く。




曲中とのギャップがすごい…




「…では、段差に気をつけつつ(笑)、次の曲参りましょう」





「はい、それでは聴いてください。”NEXT TO”」




話がひと段落したあと、リーダーの深繰くんが曲振りをした。





また表情がガラリと変わって、曲に入り込んでいく。





ステージから離れている席では、細かな表情は見えないはずなのに、4人揃ったダンスから、感情が伝わってくる。





「…次がラストの曲となります。今日は本当に、ありがとうございました!」





その言葉に、もう?!と思わず腕時計を見る。





開演から1時間半経っていた。





初めて聴く曲もあったのに、あまりにも集中しすぎていた……





最後の曲は、虹やカラフル、色彩がイメージされた曲で、ラスサビで色とりどりの花びらが降ってきた。





3階席には届かなかったけど、ふわりと舞う色がステージを覆いつくす光景は、できればシャッターを切りたいくらい素敵だった。





「またねー!」





「ありがとうー!」





ステージにたどり着いた花びらは、今度はメンバーの足元を彩る。




彩られたステージを端から端まで駆け回って、はけていくメンバーを見送る。





…終わってしまった。





明るくなった場内は、ざわざわと退場の準備が始まる。





周りの人も荷物をまとめる中、呆然と立ち尽くしてステージを見ていた。

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