第8話
だとしたら、彼はこのチケットをどうやって手に入れたんだろう?
席を立ってから、戻るまで考えてみたけど、何も思いつかなかった。
バイトしてたら関係者になれるのかな?でも、そうなら彼自身がここに座っているはず。
私の隣の席は空席のままだ。
今日、彼は来ないのだろうか?
「五戸さん、そろそろですよ」
「本当ですね。準備してたらあっという間…」
斜め前から、男女の声が聞こえるとともに、会場が暗くなった。
一瞬しか見えなかったけど、前に居る女性、カフェで見た方だったような…
ライブの取材なのかな…。すごいな…
なんて思っていると、暗くなった場内を数本のライトが駆け巡り、機械音が重なり、少しずつメロディーになっていく。
最大ボリュームに上げられた途端、ぷつんっと途切れた音。
数秒の沈黙の後、聞き覚えのあるポーン、というピアノの音。
”雨音”だ…
スポットライトで照らされた1人が、高音で、しかもアカペラで歌い始める。
1人目のパートが終わると、スポットライトが広がり、4人のメンバーが現れた。
…すごい迫力だ。
まさかバラードから始まるとは思わず、棒立ちになる。
それは1階2階席も同じ様子で、ペンライトはあまり揺れず、聴き入っているようだった。
サビに入ると、バラードからは想像できないフロアを使った激しめのダンスが繰り広げられる。
歌っている人も全力で踊っているのに、歌声がブレていないのがすごい。
4人のダンスがびしっと揃っているのは、遠くからでも、むしろ、遠くからのほうがわかった。
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