第7話
「あ、すみません。紙のチケットは右手側からお願いします」
『え…あ、はい』
入場口へ足取り軽く向かって、チケットを見せると、入り口が違うとのこと。
ライブハウスとは違って、規模も大きいから、席によって入り口が違った様子。
案内通りに、右端へ向かう。
「こちらでお伺いしますよ」
一番右の列に並ぼうとすると、その隣のブースから声をかけられた。
人の並んでいないブースで、眼鏡をかけた女性と奥でパソコンを操作している男性の2人だけだった。
よく見ると、他の入場列を案内しているスタッフさんとは違う、ツアーTシャツデザインのパーカーを身につけている。
「本日、挨拶と撮影は事前にお伺いしている方のみとさせていただいています。お席、3階です。中でスタッフが案内いたしますね」
さらさらっと流れるような説明が、頭に入らないまま頷いて、別のスタッフさんに連れられて会場に入った。
階段の手前にパーテーションポールが立っていたのを、スタッフさんが退けて、私が通るとまた閉じた。
…これは、もしかして。
「お席、こちらになります」
『…ありがとうございます』
案内された3階席は、ステージからは少し遠目で、1階2階に比べると狭い。
2列目の端っこの席に座って、そわそわ。
…落ち着かないし、せっかくだからお手洗いついでに買ったTシャツに着替えよう。
「おっと、すみません」
『こちらこそっ、すみません!』
「いいえ。あ、段差気を付けて」
立ち上がった瞬間、後ろから来ていた人にぶつかりそうになった。
…めっちゃいい声だった……
「りっくん、はい、これ」
「お、ありがと」
「陸、ペンライト2本持つの?」
「え、ほんとにやるんだ…。てか、舞斗は?」
「茜さん待ってから来るって。今車じゃないかな?」
どうやら同じ列に座るようで、4人の男女が通り過ぎるのを待ってから階段を上がった。
ぶつかりそうになった人だけでなく、全員、素敵な声だし、すらっとしていて…
顔は帽子やマスクで隠しているけど…
やっぱり、この席……?
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