第6話

「はい、五戸ごのへです」




かかってきた電話に出た隣の女性は、急いでパソコンを片づけた。





「はい、もう着いてます。入り口向かいますね」





ぱぱっと片づけを済ませ、急ぎ足でカフェから出ていった。





カウンター前のガラス張りの向こうを、おしゃれなヒールで通り過ぎていった。





…かっこいいなぁ





きっと、自分の好きな仕事をしているんだろうなぁ。





土曜日でも、あんな生き生きと働くなんて、自分とは真逆すぎて、思わず彼女が見えなくなるまで姿を目で追ってしまった。





昨日から、きらきらな人を見すぎていて、自分が情けなくなる。




今からもっときらきらな人たちを見るというのに……





「もう開場してるんだってー」





「そんな時間か。じゃあ行こっ!」





近くの席の女の子たちの会話で、はっとする。





自己嫌悪に浸ってる場合じゃなかった。





考え込んでいたら、もう開場時間になっていたらしい。





気づけばカフェの中にいたであろう、cranberryファンは少なくなっていた。





私も荷物をまとめて、会場へ向かうことにする。





デザインに惹かれて買ってしまったツアーTシャツも、せっかくだから着替えよう。





会場へ向かう足取りは軽かった。

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