第4話
終電が発車し、人が少なくなった駅を出て、マンションまで歩く。
改札を出た後、左右を見渡してみたけど、彼の姿はなかった。
歩きながら、小さく折りたたまれた紙を広げていく。
一度くしゃくしゃに丸められたのか、かなり皺になっていて、端っこは破れていた。
見覚えのある横向きの紙。
切り取り線をなぞりながら、月明かりにそれを照らす。
暗くて字は見えないけど、4人のシルエットの写真が載っているようだ。
ライブのチケット…だろうな。
決して安価ではないものを貰ってしまった後悔より、久しぶりにライブという空間に触れることができた喜びが勝る。
学生のころ、地元近くのライブハウスでバイトをしていたけど、社会人になってからは年に1度行けたらいい方だった。
街灯の下を通ったとき、日付が明日を指していることがわかった。
誰のライブか、どこでやるのか、それさえも知らないのに、こんなわくわくするなんて…
詳細を調べるため、急ぎ足でマンションを目指した。
部屋に着くなり、お腹が空いていたことも忘れて、チケットをテーブルに広げる。
”cranberry 4th anniversary live”大きくそう記されていた。
『…cranberryって……』
今度は慌ててスマホを操作する。
やっぱり、だ。
あの”雨音”を歌っているグループのライブらしい。
これは、行くしかないでしょう…
でも、本当にこのチケットを貰ってしまってよかったのだろうか?
彼が行く予定だった…?
にしても、こんな捨てる直前、もはや一度捨てたような形にするだろうか?
一緒に行く予定の人が来られなくなったとか?
…彼は明日、このライブに来るんだろうか…?
会場を確認すると、ライブハウスではなくアリーナクラスの会場だった。
さすがに、その規模から彼を探すのは難しそうだ。
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