第60話

「穂谷君のライブ~!!?行く行く~!!」



やっぱり、千里は食いついた。良かったキープしておいて。


数人の友達と学食を食べながら、穂谷のことで話に花が咲いていく。



カッコいいよね~とか、楽しそうにギター弾くのがいいのよね~とか、千里を中心に話題は広がっていく。



「それもこれも、ミナが穂谷君と同じ高校だったおかげだよね。良かったね千里」


「本当だよ~!もう、ミナ様様だわ~!」


「あはは、良かった喜んでくれて」



いつもはこんな類の会話が続いて、違う話題へと変わっていくんだけど、今日はちょっと違った。



「そもそもさ~、穂谷君とミナは何繋がりだったの?」


「なにそれー、那奈それはちょっと語弊があるんじゃないの~?」


「あ、ごめん。そんな意味じゃないからね?」


「うん、分かってるよ」


友達が不審がるのも仕方ないよ。

明らかにクラスの人気者キャラの穂谷と、地味子の私だもんね。


どこに接点があってこっち来てからも仲いいの?って思うよね。



「クラスが一緒だったし、なんかノリで?みんな仲がよかったの」


「うわ~、なんかいいな~そういうの~」


「ね~、いいよね~。綺麗な景色とか澄んだ空気をい~っぱい吸って育ったから、みんな心がクリアなのかな?」



”だっさいくせにムカつく~”

”いや~~!もう!わたしの賢人汚されたよぉ~”

”カッコいい男子に構ってもらいたくてドラム練習してんじゃないの?”

”うわ~~、そうかもよ”

”陰キャ必死”

”ぎゃははは”



「・・・・うん、そうなんだ。みんな仲が良くてね、すっごーく楽しかったの」




私は、過去の自分を隠して偽っていた。


もちろんドラマーとしてステージに立ってることも伏せている。



大学生にもなってあの頃みたいにやっかんでくる人たちなんか居ないと思うけど、また同じ目にあいたくないって恐怖心が私をどんどん別人にしていった。

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