新たな出発地点

第58話

「わ、雪だ・・・」



予報通りに降ってきた雪にしばし見とれていた。


地元の北海道では珍しくない光景だけど、ここでこんな大粒な雪が降るのは珍しい。



よく北日本勢は『このくらいの積雪量で混乱する?(笑)』…なんて馬鹿にするけど、私はそう思わない。


だって、北海道みたいに冬支度しないんだから慌てて当然だ。


北海道みたいに雪が吹き荒れる冬が毎年くるわけでもないのに、ここの交通機関や個人がそれに瞬時に対応できるわけないじゃない。


電車が止まるのも当たり前だ。線路を除雪する汽車がある訳でもないんだから。




皆がパラパラと傘を差すなか、私はフードを被るだけにして足早に家へと向かう。



地元はさ、気温が低いから、頭や肩に積もった雪が解ける訳じゃないから、家に入る前にパンパンと掃えばいいんだけど、こっちは気温も高く水分も多いからびしょぬれになってしまう。



「あーもう、しゃっこい(冷たい)な~」



家に帰って濡れたジャケットをハンガーにかけて、エアコンをつける。


濡れた頭をタオルでガシガシしながら、温かいコーヒーでも飲もうとケトルにお湯を入れてスイッチを入れた。


長ーい廊下を歩き、給湯スイッチを押してお湯が溜まるまで温かいコーヒーを啜り、高層から見える雪景色を眺める事とした。



大学二年生になった私が、こんな贅沢をしていいのかと思ってしまうが、兄様がどうしても一人暮らしを許してくれなかったんだ。


それで私は、兄様が大金はたいて買ったマンションから学校に通うことになった。



行動すべてがリモートではなく、ダイレクトにバレるじゃんって思ったけど、両親の負担を考えれば、致し方ないことであった。


救いだったのは、兄様が海外に赴任していたことだった。


でも・・・、あと数ヶ月で日本に帰ってくるけどね。

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