第46話

「言っとくけど、今回の事賢人にチクっても無駄だかんね?」


「何がよ?」


「あいつは、浮気のことは怒ってるけど、あんたのことは悪だって思いこんでるから。何言っても信じてもらえないよ?」


そんなこと、私にとってはどうでもいい。あんたが賢人と別れようがどうしようが知ったことないんだよ!


最も大事なのは、大切なものをないがしろにされたことだ。



ペダルと・・・もう一つ。



「謝ってよ!」

「はあ?何言ってるのあんた」

「海生のこと、顔がいいだけな男みたいに言わないで!」


みをは、誰よりも責任感がある人で


いつも、自分の幸せは後回しにしてでも兄弟たちのことを考えてくれる優しい兄なのだ。



それを、この女は—――



「謝ってよ!謝って!!」



私が叫んでると焦ったのか羽交い絞めにしている男は、私の口元に液体をしみ込ませた布をあてがった。



「―――あ、やま・・・まって」


遠くなる意識の中で、それだけを伝えたかった。







私はその後、暖房がガンガンきいているトイレの個室で目を覚ました。


身体に何か異変がないかどうかを調べたが、どこも痛いところはない。


あの息が臭い男に強姦されてたらって心配になったけど、どうやらそう言う事もなさそうだった。



「あ、―――これ」



ただ、ポッケにはあの時舞っていた一万円が数枚入っていた。


!!!



こんなもの、捨ててやろうと思うけど、チキンな私はそんなことも出来ずに家に持ち帰ったんだ。



それで、一つのエフェクタ―を買った。


賢人のオーバードライブが調子が悪かったから。



メーカーも好きそうなところを選んだ。

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