第44話

踏んだり蹴ったりしても、なかなか壊れる物ではないけれど、万が一ここのプレス機にでも挟まれていたら一発アウトだな。


想像したら悲しくなる。


そうであって欲しくないって思いながらシャッターをくぐったのに・・・。


バカ女が立っている前にある機械の土台の上に、見慣れた布地ごと載せてあった。



「!!ちょっと!!何したのよ!!!」


その袋は、すでに膨らみがなく、まっ平らな状態。


それを手に取りジャラジャラと振って見せる憎き女。



「言ったじゃない、お仕置きだって」


「なんであんたにそんなことされなきゃいけないのよ!?どうしてくれるのよ!この!」


きっと中では粉々になってしまっているんだろう。そう考えたら瞬間的に怒りが頭を突き抜け、身体を支配する。

数歩踏み出し、掴みかかろうとするのに、後ろから羽交い絞めされた。



「おーっと、俺のお嬢さんに手ぇ出さないでね?」


何者か分からない男に後ろから取り押さえられた。



「古いから丁度いいじゃない。珍しいのかよくわかんないけど、汚らしいから新しく買えば?―――ハイお金。わたし、優しいでしょ?」


一万円が数枚はらはらと舞い、オイルが染み込んだコンクリートの上へとおちた。


壊して新しいの買えってさ、この人って本当に何を考えているのか分からない。




「何がしたいのよ、あんた」


「――――べつにぃ、アンタの悔しそうな顔を見たかっただけよ」



そう言うと、後ろからクツクツと笑う振動が伝わる。

後ろの男が可笑しそうに笑っているんだ。


それだけでも不快なのに、煙草と酒の混じったような匂いに更に嫌悪感を抱く。

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