第43話

メンバー間の話を盗み聞きして帰ってしまったあの日。


ラインに入った写メ付きのメッセージに驚いて家を飛び出した。



”貴重なデート時間を割いて練習させてんのに、サボるとかふざけてんの?罰にこれ壊しまーす♡”



賢人カノからだった。

おばあちゃん特製の布袋に入ってるペダル。


写メはまだそのままの形だったから、急いで指定されたところに行った。



夜が更けてるから電話は持たずに、寝静まったおばあちゃんを起こさないように家を出た。



出てから全力で走った。


何としてもあれを死守しなければって思いに駆られる。


あれを壊されてしまったら、私は、私は…。



「はあ、はあ・・・・」



人生でこんなにも全力で走ったことなんて多分ない。


一生懸命走って着いたのは、どこかの機械が連なる工場で・・・。


誰の親が所有する工場なのは分からないけど、その場所はよく知っていた。


たまに練習場所に困った時に、貸して貰っていた場所でもあったから。



その工場が見えてきて、大きなシャッタ―は少しだけ開いていた。


下から漏れている淡いオレンジ色の光に交じって、嫌な金属音が混じっていた。

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