第38話

それから下に降ろして貰えたのだけれど、変に目立ってしまった分、声をかけてくる人が多くなった。



まあ・・・大概は、あの人は彼氏?みたいな声掛けが一番多いけど…。


「いいえ、兄です」


っていうと”そうなんだ!”って喜ぶ女性たち・・・。


そのルンルン&色気ムンムンな雰囲気に後ずさりしそうになる。


なんか・・・獲物を狙ってる?みたいな楽しそうな目つき。



そういう人は兄様に何気な~く近寄り、声掛けするのだけれど…。


忘れてくれるな、海生はそういうのに疎い・・というか、興味がない。



これは今に始まったことではない。

兄様は女性のそういうオーラを感じつつも、笑顔で拒否しまくる。

そうして、プライドがズタズタになって撃沈していく女性たちを、小さな頃から何度も見てきた。



「モテんな、お前の兄ちゃん」


「うん、あの容姿だしね。おまけに高学歴高収入だし」


「うわっ、俺みたいな平凡男の敵じゃん」


「あっはは、そうかも!」


「そうかもって!失礼な奴だな、このっ」



賢人や穂谷は彼女がべったりだし、自然と悟と肩を並べる。


「わ、なにあれ?」

「すっげ、見たことない」


普段ライブ映像を見まくっているけど、インディーズのステージほど刺激があるものはない。


プロにはちょっと許されない(?)ような演奏方法が見れたりするからだ。



おお~と歓喜をあげるものから、―――これはないよね?ってことまで。


でも、そんな小さな発見でも、私には十分な資料になる。



人生には無駄なことなんてないってよく聞かされていたけど、まさにその通りだと思う。

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