第33話

「あのさ」


「どうした?」


「チケのノルマ・・・あるんだってよ」


「え・・・マジで?」


「うん、マジ」


「何枚?」


「ひとバンド15枚だって」


「・・・げ、1万5千円じゃん」


「ん・・・」


「えーでも、それいつ聞いたの?」


「さっき」


「マジ?詐欺じゃん」


「んん・・・さっきっていうか、出演項目に添付してあったって。ごめん、俺見逃してたわ」


「でもさ、高校生の私らからも巻き上げるの?それに、ここに知り合いもいないのに売れる訳ないじゃん」


「なんだよね…。俺らの彼女二人と・・・・ミナの兄ちゃんに買ってもらえれば三枚はけるけど、あと12枚…」




せっかくあんなにみんな一丸になってこの日の為に取り組んできたのに…。


予想外れのことばかりで、みんな落ち込んでしまった。



「おい、どうしたんだ?」



そんな時、レンタカーを返してきたミヲ兄が帰ってくる。


私はみんなから離れて事情を説明した。



「・・・それはどう考えてもおかしいよ。第一、添付メールに載せてあったってさ、未成年なのに口頭でそのことを確認しないのはあっちに落ち度はあるよ。こんなの、出演者を集めて金を賄っているもんじゃないか…俺が主催の奴らと話してくるよ」





それからしばらくして帰って来たお兄ちゃんはみんなに笑顔を向ける。



「チケ、一応ノルマあるけど、売れた分でいいってよ。とりあえず、俺入れて三枚だろ?あとは、始まるまでの時間、俺があちこち行って捌いてくるわ、会場に戻ってな?」


「ありがとう!お兄ちゃん!」



みんなも次々にお礼を言う。


良かった・・・。ここにお兄ちゃんがいてくれて…。



それじゃなかったら悲惨なことになるところだった。

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