第31話

街の中心を通り過ぎ、少しはずれにあるその会場に着いて機材を搬入する。


私はスネアドラムとキックペダル、皆は楽器や機材をおろす。



普段学校で、定期総会をしているから慣れたものだったけど、早速問題が起き始める。



「ああ、ベースエフェクトあんだ?――――狭いからさ、直じゃダメ?」


「あ・・・と、はい、直にします」


「ギターアンプはここの使って、あ、使ったらメモリ元に戻しておくようにね」


「あ、はい…わっかりました」


「ドラムは優秀だね、ちゃんとわかってんじゃん」



私の少ない手荷物をみたスタッフは、そう言い残して去っていった。

私は小さな頃からあちこちの会場(狭いところばっか)を回ったことがあるから、ちょっと賢人たちの荷物の多さに気になってたけど、そんなに大げさじゃないはずだ。


万全に自分の持ち物を使って演奏したいって気持ちを汲んでくれてもいいのに。


リハして下ろしてさ、またバンドの入れ替えの時に、あげればいいことだ。


初めから各バンドのアンプを置きっぱなしにして、楽したいんでしょう?


・・・まあ、その方が入れ替え時間が短縮になるのは否めないけどさ‥。



悟の4つくらいしか入らないちっこいエフェクトケースや、穂谷のかわいらしいアンプ一つ上げたらだめだっていうのは、なんだか理不尽すぎる。


自分たちは高校生だって分かってる。



でもだからこそ、もうちょっと優しくしてくれてもいいのにとか思っちゃう私は甘ちゃんなのかな?

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