第29話
年末になって両親から帰っておいでと声がかかったけど、それどころじゃない私は帰らないと返事をした。
お父さんは寂しがっているみたいだけど、春休みに帰るし、それで勘弁してもらう。
美湖の自慢話を聞くのも疲れるし、姪っ子甥っ子に魂が抜けるぐらい遊び倒されるのは目に見えている。
おばあちゃんだって、もう年だから、6時間の長旅はしたくないって言ってるしさ。
兄弟たちからまたバンドばかりしてとか言われちゃうだろうしね。
3年になったらバンド活動を控えるって約束はしてるんだからさ、そんなに言わなくてもいいじゃんって気持ちになるのはもう嫌だ。
そんなこんなで、初めて過ごした札幌でのお正月。
静かな住宅街でおばあちゃんとひっそり家に籠って過ごした。
変わったことと言ったら、バンドメンバーと一緒に北海道神宮へと初詣に行ったくらいかな?
言わずもがな、地元にある神社とは規模が違って圧巻でした。
冬休みも曲を詰めて、自分たちを売り込むためのCD制作したりいろいろ準備に励んだ。
高校生活では最後になるだろう、この大きなイベントへと私たちの心は一つになっていた。
そうして迎えたライブの日。
約束通り、お兄様が駆けつけてくれて、機材もゆうに載せられる車をレンタしてくれた。
「「ちわーっす!お世話になります!」」
お兄ちゃんに元気に挨拶する面々。
「宜しく、お願いします」
なぜだか、悟だけ声が小さいと思ったら、お兄ちゃんがギロリと睨んでた。
・・・・まだ疑ってるんだ・・・。
いつもの調子で賢人と穂谷。わたしと悟で並んで座ろうとしたら
「ミナは俺の横、ナビ読んで」
なんて言ってくる。
いつもは、助手席は危ないからと言って座らせてくれないくせに…。
まあそれでも、走り出せば後ろの男三人は楽しそうに話してた。
「下調べしたけど、結構大きいとこなんだな」
「うん、そうなの!本格的なライブハウスはさ、市内で何度か経験したけど、プラス500人入るハコは初めて!」
だから、みんな気合いが入っていた。
「そうか、また夢が一つ叶うな」
「うん、でもまだね。やるだけじゃ叶ったとはいえないけどさ」
「でも、あの”ペダル”に、もう一個違った景色を見せてあげれるじゃん」
「うん、そうなんだ。だから楽しみ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます